珍獣日記
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あの人
初めて好きだ、と言ってくれた人の、よく弾いていた曲を久しぶりに耳にした。

原曲はあたりまえのようにあの頃のまま。
その年頃にしては大人びた内容の歌だったけれど、背伸びする頃だから。

誰もいない教室の真ん中で雷に打たれたみたいな、甘酸っぱいとかそんなきれいな感じじゃなかった。
あの頃の思い出の多くははみもふたもないほど苦くて恥ずかしい。

聞こえないピアノの音が頭の中をぐるぐると駆けて、あの人の顔が浮かんで消えた。

嫌いじゃなかったんだ。
好きでもなかったのは確かにそうだけど。
どうしたらいいか、わからなかったのも大きかったかな。
そのまま関係を育ててみればよかったのに、恋に恋する子どもにはそれができなかった。

ごめんねと、ありがとう。
こんなところで言ったって聞いてるわけないんだけど、その方がいいけど。

どうか幸せでありますように。
それからわがままな話だけど、あの曲をたまに耳にして、苦笑いとか、あの人もしてくれてたらいいな。

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夕陽
とろとろに煮えた
空の底へ
ゆっくりと
沈む上弦の太陽
もう起きては来ない
きれいでもない
かなしいでもない
さよならときこえる
ただ見送る



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