珍獣日記
7月28日
傘持って無いの分かるけど
そんなずぶ濡れになって
どこかの軒を借りて
少し待ってればよかったのに

雨はいつか止むけど
夏休みもいつか終わるから
走らずにはいられないんだろなって
休んでる場合じゃないもんね

振り向きもせず行く先へ
どしゃ降りの中へまた飛び出す
陽に焼けた後ろ姿が弾む
僕の視線を捕まえたまま

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7月27日
窓を開けたら風といっしょに
セミの大合唱がなだれ込んできたよ
朝いちばんの陽射しが痛い
髪切ったからうなじが焼けそう
今日はちがうメガネにしよう
朝ごはんはパンを焼こう

思い出したら胸がちくちくする
そういうことはいっぱいあるけど
生きてるからしかたないね
きみもそうだったらいいな
意地悪でごめんだけど
ぼくをそこに居させて

いま鳴いてるセミの命はあとどれくらい
昨日道路に張りついてた小鳥は
どれだけ生きられただろうか
言い訳を探したくなるけど
奇麗な羽も花びらも
魔王をたおす使命も何もないけど

歌いたい泣きたい笑いたい
それでここから立ち上がるには十分
強くなったでしょう
ここにきみが居る限り
きっと大丈夫
大丈夫だよ

7月24日
花になりたい
一度きりの笑顔の
ために摘まれたい

雨になりたい
草木と踊る
ちいさなひと粒に

海になりたい
星を旅する
おおきな波に

風になりたい
みんな抱きしめる
やさしい歌に

空になりたい
ただ愛してやまない
光そのものに

7月23日
鉄格子の窓から
白く燃える砂を見ていた

赦せぬものなどもうない
終わらない痛みなどない

だけどこころの奥底に
刃物のような炎を焚いて

生きると言ってしまったから
眠るわけにはいかない

ひとを最後に突き動かすのは
きっとそれだと思うから

黄昏の校庭に夜が染み込む
熱を帯びたまま朝を待っている

7月19日
みみずののたくったような
と母がよく言っていた
兄のそれに似ているような
そうでもないような
きれいなほうが勿論いいとして
字など伝わればよいのだと
私もそう思うけれど
だから字はひとを表すと
言われて納得してしまう
不器用で安定した不安定
たかが数センチのインクの跡
きのう庭で遊んでいた
小鳥のあしあとのよう
少し歩いては気紛れに休み
踊るように飛び立つ
真夏の空へ
どうか幸せでありますように
不運につかまりませんように
あなたでありますようにと
祈っています
7月18日
なんにも考えずに
アイスコーヒーを作ったら
なんだか今日は寒い
ホットコーヒーがよかった
もっと濃くて
お砂糖いっぱいのがよかった
コーヒーよりあつあつの
コーンスープでもいいかな
焼きたてのパンがほしいな
焼きたてのクッキーでもいいかな
かわいい花柄のテーブルクロスに
野苺のジャムとネコと小鳥と
ギターにあわせて歌って踊って
棚のすきまからコビトがちょろり
われもわれもとリズムに合わせ
笛や太鼓やら笑い声やら

でもコーヒーが冷たい
あったかいのだったら
よかったのに

7月14日
もしもちがうからだだったなら
あおくひかるあの太陽を
見ることはできなかったでしょう
ひとりきりの静けさも
わたしだけのもの
いたいとふるえるこころも
わたしだけのもの
たぶんだれの手もいらない
汚してしまうから
ここで枯れ落ちて風になる
そのときを待ってる

7月13日
曇りのち天気雨
取り繕うような馬鹿騒ぎ
湿りきった重い風
明日は晴れないんだって

携帯が言うから間違いない
間違えてるのは僕のほう
空は騒いだりなんかしない
晴れなくても夜は明ける

散らかしたままの心を
横に置いて下さいと
秒針が繰り返す

強制スクロールで迫り来る
スタートラインを見つけて
ついに蝉が鳴く

7月10日
図書館の駐車場からエントランスまで
緑がたくさん植えられていて
湿度の高い緑の海を
泳ぐようにゆったりと歩く

いきるもしぬもなきがらも
ヒトの手に握られていても
悲壮感の欠片さえない
つややかな葉のひとつひとつに

ごめんと言うのも違う気がして
だけど誰のためでもないから
帰る道もやっぱり
ただゆったりと歩く

7月7日
星がうたう
おおきなステージ
幕はひかれたまま
むこうでかれらがくりひろげる
しあわせな物語を今年も
まぶたの内に描く
オーケストラ
弾けて響き渡る
まばゆい照明を浴びて
はくしゅかっさい
きらびやかなドレスでお辞儀
間違いなくハッピーエンド
みんなしあわせそうに
見えないし聞こえないけど
だからたぶんそうだよ
見えないから
聞こえないから
きっとそうなの



7月6日
春はすずめがかしましい
庭に軒先に木の枝に
夏は夜明けの光とともに
高らかに歌う蝉の声

秋の窓辺に浮かぶ満月
冬は恋しさ降り積もる
旅にも出られぬ日々の中
それらを愛しく想うのは

命あるものないものの
喜びに満ちたざわめきが
途切れることなく続くため

はるなつあきふゆ巡り行く
今日という道にまた一歩
明日を夢見てまた一歩
7月3日
ふくれてふくれて
ついに色づく
いたずら顔の
黄トマト
7月2日
ねむいねむい
あなたもねむいなら
ねむけのなかであえるかしら
くずれおちたらだきとめて
いっしょにとろけてくれるかしら
せみがとおいのです
すいそうのみずはおゆになって
ぼやけてかすんで
てあしがおもい
みみもとでひとつずつ
おしえてくれないかしら
せかいのぜんぶを
あなたのこえのかたちにして
あたまのなかへつめこむんだよ
ねむいねむい
わたしはねむい
ねむいねむいごご

7月1日
夏と言うには
静かな夜明け
白い窓辺に
溶け落ちる
名もない今日を
明日を手放し
月日は遠く
夢の中