珍獣日記
封筒
封筒のにおいがすき
紙のてざわりがすき
メールもすきだけど
だきしめられるほうがいい
どうかしあわせに
なまえを呼んでくれたあなたへ
あいをこめて
風よりもかろやかに
透明な祈りのままに
いつかおわかれのときがきても
穏やかに眠れるように
不確かなことばより
あいだけをこめて
どうかしあわせに
なまえを呼んでくれたあなたへ
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固く結んで
ほどいて結ぶ
指切りしない
赤い紐
店の隅っこ
半額の切花
生まれてきてよかった?
生きててよかった?
答えのない疑問といっしょに
さいごのひとひらをひろげている
泣かないで
泣きたくなるから
いっしょに笑っていよう
ぼくは笑っていたい
きみのために
ぼくの命を使いたい



のはら
のはらのまんなか
ぽつんとひとり
耳をすませば
きこえる命

木々のざわめき
水面がはねる
はなびらのうた
そら駆ける羽音

そのなかのひとつ
のはらのひとつぶ
ひとかけらのぼくは

のびすぎた草のとなりで
ゆらゆらゆれる
かぜにゆられる
螺子

どこからとれたかわからない
大きなネジが落ちていて
まわりをぐるっと見回したけれど
なんのネジかわからなくて
家具はどれも壊れてない
放たれた疑問符のように
いらないなんて言えなくて
ずっとそこにある
ぬいぐるみ
ずっといっしょに寝ていた
白猫のぬいぐるみのミーちゃんは
どこへ行ったのかな
縫い目がおそろい
綺麗じゃない
けど
縫い目がひとの形を
作っているから
ぶさいくでも
人間ごっこを楽しんでいるんだ

人間
猫は好き?って聞かれたら
もちろんって言うよ
いっぱい抱きしめさせてくれるもの

鳥は好き?って聞かれたら
すごく好きって言うよ
可愛くて綺麗であの羽はあこがれなの

うさぎだってパンダだって
カエルだってトンボだって
花だって空だって飛行機だって
好き

じゃあ人間は
人間は好き?って聞かれたら
どうかなって
思わず苦笑いしちゃうよね

花も風も
そんなこと聞かない
聞かないから

しょうがないなって思いながらやっぱり
好き
って言うよ
鳴けぬなら
鳴けぬなら

野で暮らしたろう

ほととぎす
遠回り
ナビはある
地図もある
バイパス通ればすぐだよって
言われたって
来た道をもどる
高速は怖い
迷う時間も最初から入れてる
ナビの指示に神経使うの
疲れるんだもの
いつだって
遠回りばっかり
目的地に着く前に
終わっちゃうんだろな
っていうより
目的地は目指してないのかな
自分のこともよくわからないよ
行かなきゃ
行かなきゃって思うし
それはいつまで続くんだろうって
怯えながら迷ってる
T字路
曇り時々晴れ
夏を迎える午後の畑
しゃがみこんだおばあちゃん
何か作業をしている
そのとなりに
黒い塊が落ちていて
何だろなって思ってたら
クロネコだった

あんなふうに
ふかふかの土にねころんだら
きもちいいだろな
なんにもいわないし
なんにもしない
ただひなたぼっこして
うとうとしてるだけ
わらっていきている
あなたのとなりで
そんなふうに生きたかった

音にならない悲鳴が零れて
すぐに乾いて
道はT字路
ブレーキアクセル
せなかにかじりついたばけものが
早く早くと怒鳴っている


月夜
月夜

窓にはいつも月が泳いでいる
ごきげんな満月
ふきげんな三日月
見えなくても
きっと夜の隙間に隠れてるだけ
可愛い月
水の揺れる音がきこえる
耳の奥でこだまする
むらさきいろのグラスの底で

チョコレート
甘いことばは
一粒だけで
チョコレート並に
大打撃
狸寝入り
ホントに眠いのは
主に授業中で
休憩時間はだいたい
狸寝入りしてた

耳だけで感じる
雑音が好き
自分とは関わりのない
平和な賑わいが好き

期待されず
期待せず
教室の隅は
居心地がよかった

目と目を合わせて
おひさまみたいに笑って
がんばってねって
そんな風に言われたら

がんばるしかないのに
うれしいのに
胸がぎゅうっとなって
泣きたくなる

隅なんてもうない
じぶんの真ん中で
夢とか希望とか未来とかと
対決している
掃除機
吸い取ってるようで
吹き飛ばしてる

実はあんまり
掃除できてない

安物だもの
まあしょうがないよ

轟音立てて
暴れてるだけ

頑張ってる
つもりにはなれるかな

掃除機だって
彼なりにがんばってるし

小さいこと
気にしない気にしない

ちゃんと出来たら
それでおしまいで

あたりまえの普通は
オチがないじゃない

ダメだけど
まあいいかって

笑ったほうが
楽しいもんね


整頓
右のものは右
左のものは左に
キチンと整理整頓
したくなっちゃうんだよね

なにがどこにあって
なにがないのかわからないから
ちらかってるのはきらい
ないものは探したくない

だから余白がない
まるで休符の欠けた譜面
息がきれたらおわり

おわりだって思う頃
タクトがとまる
起爆点を吸い込む
スケッチ
メモリに残された記憶から
いろんな風景が蘇る

にんげんて水みたいね
入れ物で形がかわる

わたしはほんとうに
わたしなのかしら

描いても描いても描ききれない
いろんな形

こぼれたりたりなかったりを
何度も繰り返してる

ドミソの次はシ
不安になるけど
ぼくの胸にぽんと置かれた
君の声みたい

ドミソ



中の方の細かい部品から
ちょっとづつ錆びてる
毎日チョットづつ
さいごにはギコギコ言いながら
止まってしまうわけで
リサイクルはできない
少なくとも自分では

こわれたおもちゃ
あそんでもらえなくて
寂しいかな
ホッとするかな
きみがいないとさびしい
さびしさでは
どこへもゆけないけれど

ギコギコ
歌っていよう

恒星
今日も会えて嬉しい
回っているのは
こっちなんだけど
ねぼけたまま
最初に話しかける
あなたが好き
決意
決めてることなんてあんまりない
決めたとおりにいかないもの
大体のことがなりゆきと気分
そのときそのときに走り出すだけ
壊れるまで足を前に出すだけ
曇時々雨
雲に隠れた晴れ
曇後々晴れ
晴れ後々雨
回る空模様
空は回る模様
空回る模様
絡まる回る
回る回る回る回
る回る回る回る回る回る
回る回る回る回る回る回る回る
昨日のこと

昨日のことは昨日のもの
今日は今日のために笑うの
明日は明日の風が
吹かなくてもとりあえず明日のもの

ポケットにハンカチ
忘れ物は忘れとこ
裸足で駆けてく人に習って
いっしょに行きませんか

かみさま
おげんきですか
今日も世界中から
たくさんお手紙が届いているのでしょうね

あなたがいったいなんなのかわからないから
わかるって人に話を聞いてみたんだけど
やっぱりわかりませんでした

みゅうつーかっこいい!!
と似たようなものかなって思ってます

いつか体がこわれたら
そちらへ行くことになるのでしょうか

死後の世界とか言われると
正直げんなりします

ここで朽ちて花になりたい
それはさておき

なんとなく準備しておこうと思ったので
こうして文字を綴っています

だからよかったら
そうゆう予定があるなら
ちょっとまっててください

よろしく
玩具箱
決して狭くはない
狭くはないけれど
小さな世界

作って壊して
毎日あそぶ

弦の切れたギター
汗をかいたコップ

あなたが呼ぶ名前は
ここでしか生きられない

小さな世界
風も吹かない
モニタのハミングだけ

るるる

絵の具
絵の具

赤も青も黄色も
どの色も好き
白い画用紙に
魔法をかける道具
好きだからなくしたくない
だから使いたくない
絵の具の箱はずっと
きれいなまま
絵の具はずっと
絵の具のまま

うさぎ小屋
庭にぽんと置かれた
プレハブがこども部屋だった
とんでもはねてもうたっても
インコがびっくりするくらい
夜にねこが訪ねて来れば
一緒にぬくぬくおふとんの中
朝になるまで彼女といっしょ
本を抱えて寝ころんだ
南天水仙芭蕉山椒
蜜柑は種から何年もかけて
今はどれだけのびただろう
机の引き出しの宝箱
溜め込んでいたいろんな種を
撒かれたあとはどうなっただろう
あの子のお墓の上に
花は咲いているのかな
飛んでいってしまったあの子は
どこかでしあわせに生きられたかな
ぼろぼろの洗濯機の横に
めだかの水槽があって
彼らのために蛇口は
水をこぼしつづけていて
めだかはずっといたから
あれは小さな星だった
きっと世界の全部だった
いもむし
いつかちょうちょになるんだって

いつかがいつかもわからずに

いつのまにかはるはすぎてた

たぶんもうむかしのかなたに

ちょうちょにはならなかった

とべないままつちにかえる

はっぱをかじるのがすきだったんだと

わらいながらねむるんだろな

たとえばきみがそうだとしても

はねもないままえだからとんじゃっても

どっちだっていいとおもうから

だからそうなんだろな
雨の日
雨の日は
あなたの姿をおもいだします
目をとじて描いた
にせものの記憶だけれど

傘はいらない
やわらかな春の雨を
抱きとめてほほえむ
あなたの姿と

うまれたての緑に弾む
あすふぁるとを撫でる
生あるものもないものも
あいする雨の歌声を

おもいだしながら今日も
乾いた窓を眺めています
紫陽花に会えるまではと
言い訳しながら